天官賜福 bilibili 英語版の和訳 #75

天官賜福 英語版漫画の和訳 #75です。

 

☆登場人物の台詞を理解することが主な目的なので、台詞以外の、絵で表されている描写は最低限しか書いていません。

☆登場人物や場所の漢字が間違っている可能性があります。読んでくださって間違いに気づいた方は教えてくださったら嬉しいです。

☆意訳・省略ありです。

 

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カラカラと壺を振り、出た賽の目は五が2つ。

「おおー!」

観客たちが沸く。

「見たか?」

「目が大きくなってきてないか?」

「クソガキ、何も分かってないなら大声出すな!

「まったくだ!」

そんな観客たちとは裏腹に、謝憐に喜びの色は薄い。

”はあ…三郎は私を弄んでいる。運が変わる姿勢なんてないみたいだ。”

そうため息をついて、謝憐は三郎に告げる。

「三郎、ここでやめましょう。次の勝負で勝者を決めます。」

「待ってください。」

三郎は再び、謝憐の手を優しく包んだ。

「?」

「哥哥、あなたはまだ…もし負けた時、どうするか言っていませんよ。」

三郎の瞳に見据えられながら、謝憐は固まる。それについては何も考えていなかったのだ。

謝憐とは別の理由で、観客も固まっていた。

「哥哥…?」

思いもよらぬ謝憐への呼びかけに、皆驚愕している、

謝憐は荷を開き、ためらいつつも、彼の持ち物の中で最も価値あるものを取り出した。

「私は…残した食べかけの饅頭しか持っていません。」

自分以外の者には無価値であろうそれを謝憐は冷や汗をかいて差し出すが、三郎はにっこりと笑った。

「分かりました。ではこの饅頭ですね。」

その様子に場は静まり返った。

郎千秋も同様に固まっていたが、ハッと気づく。

「私には半分食べ終わった饅頭ほどの価値しかないという意味なのか?」

これに納得したのか、賭場にはまたうるさい笑い声が戻った。

 

「どうぞ。最後の勝負です。緊張しないで。」

「…緊張なんてしていませんよ。」

そうは言いつつも、謝憐は顔に汗を滲ませている。

三郎とともにカラカラと壺を振り、ゆっくりと開けていくと…

「おや?私の負けだ。」

六が二つ並んでいた。

悔しげもなく、むしろ喜ばしいようにそう言う主に、観客たちもようやく感じ取るものがあったようだ。

「…。」

「主は明らかに、相手が勝つまで勝負を待ったんだ。」

そして観客たちから大きな拍手が沸き起こった。

「主の負けだが、完璧な負け方だ!素晴らしい!」

「彼は主に手取り足取り教えてもらったから勝ったんだ。主の教え方がうまいおかげさ。」

「今日の賭けは目を瞠るものだったな。」

「正しい壺の振り方も学べたしな。」

「得たものは大きいぞ。今後十年はあのやり方でいくぞ!」

郎千秋も偉そうに声を上げる。

「おい!お前は負けたのだから、約束を守って今すぐ私を下ろせ!」

三郎は何も言わず、ただスッと指を動かした。

すると手足の見えぬ拘束が消え、郎千秋はどさっと垂直に落下した。

「大丈夫ですか?」

「…問題ない。」

風師に手助けされ、郎千秋はすぐに身を起こした。

「彼は騙そうとあなたを呼んだのだろうが、幸いなことにあなたが勝った。本当に感謝する。」

彼の言葉の意味が分からず謝憐はきょとんとするが、幕が開く音がして、すぐにそちらへ顔を向ける。

そこには、もう何も隔てるものなく姿をさらす三郎がいた。

「哥哥、私に勝ちましたね。」

謝憐は苦笑いする。自分の力でないのは分かり切っていた。

「からかうのはやめてください。」

「からかっていませんよ。するものですか。」

そんな彼を見て、賭場が再びざわめく。

「今日の主は…また皮を変えたのか?」

「死んじゃいそう!主の新しい皮が美しすぎて、私死んじゃいそう!」

「本当ね!とても柔らかくて瑞々しいわ!」

「死んじゃうって?お前もう死んでいるだろう、ばばあ。」

そんな喧騒を聞きながら、謝憐はちらりと隣立つ三郎を見る。

”いや…。これが、血雨探花の真の姿なんだ。”

謝憐は、これが三郎の気まぐれな変身でないことを確信していた。

“次に会う時は本当の姿でお会いしましょう。”

以前道勧で彼が言った言葉を思い出し、思わず口元がゆるむ。

三郎を見上げ謝憐はにっこりとほほ笑んだ。

「今回はありがとう。」

 

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