『不小心救了江湖公敌』『Saved the Public Enemy by Mistake』 BILIBILI漫画 英語版の和訳 #2

不小心救了江湖公敌 英語版漫画の和訳 #2です。

 

☆登場人物の台詞を理解することが主な目的なので、台詞以外の、絵で表されている描写は最低限しか書いていません。

☆登場人物や場所の漢字が間違っている可能性があります。読んでくださって間違いに気づいた方は教えてくださったら嬉しいです。

☆意訳・省略ありです。

 

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3日後

陸九の診療所には、すっかり回復した江鶴の姿があった。髪を結いながら失礼なことを言う。

「この服は肌触りが悪いぞ。何の生地だ?」

「私の服が気に食わないのなら裸でいろ。」

目も合わせず冷たく言う陸九に江鶴はくすくすと笑う。

「そんなきついこと言うなよ。何を読んでいるんだ?もう4時間もそれを見ているだろう。」

「帳簿だ。この3日間、薬草の出入りの記録を確認する暇がなかったからな。」

「へ~。」

暗にお前のせいだと言ったつもりであったが、江鶴の興味は薄そうだ。

「お前、退屈なのか?」

「?」

「何もやることがないなら、玄関広間に行って小禾をここに呼んで来い。」

「何だって⁈よく自分の患者を使い走りにできるな!」

「行かないなら、今日の薬粥に蜂蜜も甘い干し果物も入らないぞ。」

「いいだろう!行こう!」

陸九が作る薬粥は、蜂蜜や干し果物がないと食べられない代物らしい。江鶴は冷や汗をかいて快諾した。

江鶴がいなくなり、ようやくあたりは静かになった。

机に落ちたイチョウの葉を手に取り考える。

”彼はまるで、裕福な家で甘やかされて育った子供みたいだ。全く行儀がなっていない…。本当に柳江鶴なのか?”

しかし彼の恐ろしい言葉を思い出す。

“これは生死の契だ!俺が死んだらお前の命も終わりだ!俺に対して陰謀を企てようなど思うなよ!”

陸九は都合の良い考えを捨てざるを得なかった。

”私は何を考えている…?生死の契は极乐楼の4つの邪術の一つではないか!彼が柳江鶴でなければ誰だというのだ?”

そう考えていると、江鶴が小禾を脇に抱えてものすごい勢いで陸九のもとへ駆け戻ってきた。

「先生、私を探していたのですか?」

かわいそうに小禾は目を回している。

「どうだ?速かったろう?」

江鶴は軽く息を切らしている。

「…彼を下ろせ!」

 

小禾を落ち着かせてから要件を伝える。

「この数日分の帳簿を読んだ。だいたい問題ないが、何人かの買い手について聞きたい。3日前、枸杞・紫蘇・撫子を4両売ったな。2日前には使君子の果実と、木蓮の蕾を3両。誰が買ったんだ?」

「あ!」

すぐに思い当たったようで、小禾は声を上げる。

「うん?」

「百華楼から来た女性が、今言ったものを皆買っていきました…。」

「何⁈」

陸九の眉間にしわが寄る。小禾はそれについて問われている理由が分からず、恐る恐るその女性について説明する。

「きれいな女性で…鈴蘭という方です…。彼女は両日とも処方箋を持ってきたので、その目録通りに全て渡したのです…。な、何かまずかったでしょうか?」

「彼女が使君子の果実を求めなかったら何もまずくはなかった。だが現状、彼女は灵丹道士に使うに最適な毒を所持している。」

陸九も少し困惑している様子だ。彼の言葉を聞いて小禾は泣いて訴える。

「知らなかったんです!誓って私は…!」

「心配するな。教えなかった私の失態だ。とはいえ、それらを混ぜ合わせても一般人には無害だ。鈴蘭姑娘の処方箋が間違っていたのだろう。」

その言葉に江鶴がへらりと笑う。

「間違えて毒を頼むなんて、奇妙だなぁ。」

何も問題はあるまいと思いたかったが、全く江鶴の言う通りだ。怪しすぎる。

“何故最近はこんなに面倒ごとが起きるんだ⁈”

陸九の眉間にはさらに深いしわが寄る。

「何も問題はないと確認するために、私自ら百華楼に行こう。」

「俺も行きたい!」

「ふざけるなよ。」

江鶴は冗談めかした様子だったが、陸九の目は真剣だ。

「小禾、玄関広間に戻って良いぞ。」

「はい、先生。」

 

帳簿に目を通し終わった陸九が江鶴に話しかける。

柳江鶴。」

「うん?」

「何か忘れていないか。お前の傷はほとんど回復したが、灵丹は完全に取り去られている。その保護がなければ、その身体は何百年と積み上げてきた内なる力に耐えられないだろう。お前はまだ強制的に、気を傷ついた経絡に循環させている。身体がその力に耐えられなくなった時、その力は弾け、お前は死ぬだろう。」

江鶴は口を挟まず、静かに陸九の話を聞いている。陸九は続ける。

「言い換えればお前はいつ死ぬか知れない。お前が生きようが死のうがどうでもいいが、私たちは生死の契で縛られてしまった。私が灵丹を復元する方法を見つけるまでは、この診療所に滞在してもらいたい。面倒ごとに巻き込まれるな。一歩もここから出るな!」

陸九がそう言うと、2人の間には沈黙が流れた。

「予想外だな。」

江鶴が沈黙を破り、陸九の顔に手を伸ばして顔を寄せる。

「?」

「陸先生は愛しい者は家に隠しておきたいやつなんだな。」

指で陸九のあごをツイとあげ、静かに笑む。

“…こいつは怪我をしたときに頭までやられたらしいな。”

「痛い!」

陸九は江鶴の頭を乱暴に掴み、机に押さえつけた。

「落ち着け。お前の頭を調べたいだけだ。」

「嫌~!やめてくれ~!」

言葉のわりに江鶴はなんだか楽しそうだ。

 

陸九は百華楼へと出かけていく。小禾と共に玄関に見送りに出てきた江鶴に、陸九はもう一度釘を刺した。

「もう一度言うが、お前は外出してはいけないからな!すぐに戻る。」

「気を付けてくださいね、先生。」

陸九の姿が遠ざかると、小禾は江鶴に言った。

「公子、陸先生はあなたのことを思って、出ていくことを許さないのですよ。」

自分のためだろ、と思ったが口には出さなかった。

「ここは初めてで、土地柄をよく知らないでしょう。実は、桃花塢は安全な場所ではないのです。」

「へえ?」

江鶴は笑みを浮かべるが、それには今までにない翳りがあった。

「どんなふうに安全ではないんだ?教えてくれ。」

江鶴が突然別人のように感じられ、小禾は戸惑う。

「もちろんです。」

そう答える声は少し震えていた。

 

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この話は薬草の名前の勉強になりますね!使君子なんて名前初めて知りました!

WOLFBERRIES:枸杞(クコ)

PERILLA LEAVES:紫蘇

DIANTHUS:撫子

RANGOON CREEPER:使君子

MAGNOLIA:木蓮

 

話とは全く関係ない知識ですが、別の「しくんし」について。

昨日たまたま、図書館で借りた着物の文様の本を読んでいたら、「四君子」が出てきました。

草木の中の君子として称えられる梅、蘭、竹、菊の4つがそろった文様。

中国で吉祥の文様として扱われ、日本に伝わったそうです。

 

こうやって意図せず、全く別の興味から読んだ本や漫画の内容が少し重なり合うことってありますよね。

偶然に意味を見出すのは人間の性、という風に、あまりいいことではないように言われるけど...なんだか嬉しい。楽しい。